現在の報道について
学会発表が予定されている61歳の代理母のケースが報道各社で取り上げられ、現在代理出産に注目が集まっています。61歳という年齢ばかりが取り沙汰される危惧は先にも述べましたが、この報道が皆さんに改めて生殖医療について考えていただくきっかけになったことはとても重要な意義があると当院では考えております。
一連の多数の記事が、代理出産について適切な客観的表現と正しい情報の掲載で、今後さらに社会の議論を高めて現在の日本の実態と現実に沿った法整備を導く、報道のあるべき姿だったと思われます。
しかし、残念ながら今回の報道の中で信濃毎日新聞のみが、23日朝刊社説にて「法による禁止を急げ」の見出し以下、極めて断定的に代理出産を否定した、事実関係にも誤解の生じる文脈の記事が掲載されていました。
その記事を読まれて不安と疑問を抱いた患者さんより様々な問い合わせが院長とカウンセラーのもとに相次ぎ、当院は現在も対応に追われています。以下、問い合わせの一部です。
「代理出産しかもう道がないけど子供がほしい。なのにもうすぐ法律で禁止されてしまうのか?根津先生でも代理出産をやってもらえなくなるのか?」
「院長はインドの件に関わりはないのか?」「報酬はどのくらいはらえばいいのか?」
「代理をしたひとは犯罪者になるのか?」等々・・。
不安と誤解による質問が多く、信濃毎日新聞の報道としての記事表現が不適切だったと言わざるをえません。
過日当院代表が信濃毎日新聞社、編集応答室室長に連絡し、電話にて患者さんへの配慮不足と当院の実害を訴えたところ、社説は社の意見であり、表現にも問題を認めないというとても残念な回答でした。この新聞の読者でもある患者さんの代弁者としては力が及ばず申し訳ありませんでしたが、今後は取材他、病院としての対応を考えさせていただく方針をたてております。
改めて、代理出産はまだ議論の段階であること、医師をはじめ、患者さんに限らず社会の問題として一般の皆さんも議論を重ねて法整備を考えて行くべき日本の問題であることをここで明らかにさせていただきたいと思います。
患者さんはむやみに不安をもたず、安心してご自分の意見と希望をお持ちください。
そして、改めて報道関係者の方々には、院長の提言をご理解いただいた上で客観的な報道でこの国の生殖医療の議論を高めて下さいますようお願いいたします。
以下、院長のコメントです。
インドにおける代理出産の報道、私がこの28日に第26回日本受精着床学会で発表する「実母による代理出産」の件、等を通じ、「国内における代理出産禁止の法制化を急げ」との報道が今月23日の信濃毎日新聞の社説でなされました。
私が既に述べて来たことは、
| 1. | 代理出産でなければ子供を手にすることのできない女性が居ること。 |
| 2. | 相互扶助とボランティア精神により成り立つ代理出産を禁止することは、憲法における基本的人権と幸福追求権を侵害するものであること。 |
| 3. | 今回報道されたインドにおける代理出産は、私が求めている代理出産とは全く異質なものであること。 |
| 4. | 禁止すれば益々水面下に潜り、取り返しのつかないケースが出現する可能性が大きいこと 等であります。 |
新しい技術が出て来れば、当然それを悪用したり、また、悪用せずとも問題が発生することは、歴史が既に証明しています。だからと言ってその技術を禁止して来たならば、私たちの今の生活はあり得ないでしょう。悪用する者を罰則にて対処し、問題をどのように解決するかによって、様々な技術は私たちに幸せをもたらせて来ました。
かつて、米国にて人工妊娠中絶が禁じられた時がありました。その時、水面下で医師でない者により不潔で危険な人工妊娠中絶が行われ、多くの死者や子宮摘出術を含む、重篤な患者が発生、キリスト教協会が日本での安全な中絶を斡旋したとの歴史があります。
やっと、民主主義・自由主義国家となった日本を、何もかも法律で禁止する統制国家に逆戻りさせてはなりません。
お互いが助け合い人間愛によって成り立つ国にすべく、私たちは努力すべきではないでしょうか。
代理出産によって生まれた子供さんたちは、家族の愛情の下、元気に育っています。やがて出自を告げられた子供さんは、命懸けで自分を生んでくださった代理母に対し感謝と畏敬の念を持ち、掛け替えのない命を大切にしながら生きてくれるものと私は確信しております。
2008年8月27日 諏訪マタニティークリニック院長
根津八紘
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