今回のインドにおける代理出産の件について
今回のインドにおける代理出産に関して、当院は全く関与しておりませんでしたが、様々な問い合わせがございますので、改めて当院の方針をご説明させていただきます。
現在当院は、『実母による代理出産』だけに限定して取り組んでいます。
これは、代理出産に対して社会のサポート体制が整っていない日本で、現状では最もトラブルが起こりにくい代理出産の形と考えているためです。
当院の代理出産で産まれたお子さんは皆さん、現在ご家族の元で健やかに育っており、折々幸せなご報告をいただいております。
今回のインドの問題を引き起こしたもっとも大きな要因は、いまだ国内での代理出産が法整備されていないことにつきるでしょう。
当事者の「子供がほしい」という切なる気持ちを無視し、対応が遅れるほど、海外でこのような悲劇を生むことになります。
なにより産まれてきた子供が日本で幸せに暮らせるよう、国内の法整備が急務です。今の少子化に悩む日本の現状を踏まえて、営利目的の代理出産は固く禁じつつ、ルールとサポート体制を整えて代理出産が安心して行えるようにしていかなければなりません。
新しい命を望むということに対する責任と愛情をなくして代理出産は成り立ちません。そして「依頼者--代理母--医療者」の信頼関係なくして行われるべきことではないと当院では信念を持って取り組み続けています。
今回のインドの問題をきっかけに、国内で安心して代理出産に取り組めるように法整備をする必要性を、改めて皆さんに考えていただきたいと思います。
最後になりましたが、どんなご事情であれ起こってしまったことです。今回産まれてきたお子さんが無事日本でご家族と暮らせるよう、また健やかに育っていけるようスタッフ一同、心から願っております。
以下、院長のコメントです。
代理出産に関し、私が懸念していたことの一つが今回のようなケースです。
日本学術会議は過日"代理出産原則禁止"という最終報告書を提出しました。もしこのまま国内で禁止したとしても、代理出産を希望する方まで皆無にすることはできません。グローバル化した時代に国内で禁止しても海外にその活路を求め、今回のようなケースはこれからもいくらでも起こり得るでしょう。
生まれつき子宮のない女性がいます。また、若い女性に子宮癌が増加、そのため子宮をなくしてしまう女性も増えています。そのような女性が自分の卵子で旦那さんとの子供を手にする唯一の手段が代理出産です。「代理出産を希望する女性がいて、それをボランティア精神の下で受けてくれる女性がいるのならば、相互扶助精神からして国内でも一定のルールの下、認めるべきである」と考え、私は行動とともに訴えて参りました。
国内におけるしっかりとした代理出産に対する基準と、営利目的など悪用する人に対する罰則、そして今回のようなことが起きないようにする啓蒙が一刻も早く求められます。
マスコミ報道による情報からですが、今回私が感じた一番の問題点は、第三者の卵子(購入?)を使った受精卵を、その後他の女性に移植するという金銭契約による代理出産をしたこと、そして最悪の場合における子供の福祉を考えていなかったこと、です。
私共のもとには既に100組をゆうに超える代理出産に関する問い合わせが来ております、しかし、代理出産に関する国の基準や保証制度は確立しておりません。その中で、母体が健康体であることはもちろんですが、当院と当事者の責任において行えるという信頼関係の確立した方とのみ代理出産を施行して参りました。しかし現在のように周りになかなか告知できない状態での約9ヶ月間の代理母側の家族の生活は兄弟姉妹間といえども、かなりストレスとなり得、それがマイナートラブルに発展する要素を持っています。その点、高齢の問題はあるものの、実母からの申し出による代理出産は家族間でのサポートが強固なものとなりトラブルを起こしにくい為、現在は実母による代理出産のみ行っています。いずれにしても当事者たちの責任の下でのことで、依頼夫婦に不慮の事故が起こった場合のことも事前に話し合い、それでももし、当事者すべてが子供に対する責任を取れない状況が生じた場合は、常日頃述べているように、私が出来る限りのサポートをさせていただく覚悟で取り組んでおります。
いずれにしても、代理出産は関わる人たちの責任と信頼関係、そして人間愛の下で行われるべきものと考えています。
最後に、今回産まれた子供さんが、日本人として認められ、幸せな家族の一員として育てられますことを願ってやみません。
2008年8月9日 諏訪マタニティークリニック院長
根津 八紘

