「8例目の代理出産について」記者会見時発表原稿 根津八紘院長
諏訪マタニティークリニック 院長 根津八紘
H20.2.29 PM2:00~
産科・婦人科・小児科病院 医療法人 登誠会
諏訪マタニティークリニック 3F多目的ホール
代理出産に関し読売新聞とテレビ信州の報道を通じ公にされた8例目の代理出産例について、この場を通じ御報告させていただきます。
当院における代理出産につきまして、すでに報告させていただいている5組とその後報告させていただいた2組に関して、代理母の方もお子さん達も順調に経過していることを、まず御報告させていただきます。
さて、実母が娘のために代理妊娠され、継続中であった1組のケースについてですが、最近無事に出産することが出来ました。
このケースはロキタンスキー症候群と言って、生まれながらにして子宮の無い20代後半の娘山田さん(仮名)に代わり、50代後半の実母が代理出産したケースです。
一昨年暮れに日本テレビの番組「ニュースZERO」の中で放送された、私の関与した代理出産に関する報道を見ていた母親のすすめによって、昨年2月、私宛に届いた山田さんからのメールが事の発端でした。
それまで山田さん(仮名)は、米国での代理出産を模索していたようでしたが、金銭面も含め、現実的に不可能として諦めていた矢先のことだったようです。山田さんの実母が人間ドックのデータを携え、仕事の関係上来院出来ない山田さんの実父を除く、実母と山田さん夫妻の3人で来院されたのは昨年3月でした。
充分なインフォームドコンセントの末、早速治療に入り、3回目の体外受精にて妊娠。その後順調に経過。念の為安静入院、10ヶ月に入った時点で大事を取り、帝王切開によって2,200gの男児を無事出産することが出来ました。
その後、山田さんの実母については、更年期障害予防への対処などもあり、順調に回復しています。また、赤ちゃんへの母乳分泌に向けての山田さんへの対応も行い、1回に10cc足らずですが母乳も出るようになりました。直接乳首を銜えさせながら混合栄養で哺育できています。
一度は諦めていた子供を手に入れることが出来、山田さん夫婦は当然のことながら、子供を生んだ山田さんの実母(赤ちゃんからは祖母にあたりますが)も責任を果たせた喜びの中におられるのが現在のところです。
ではここで、私が代理出産を続けている理由について述べさせていただきます。
第一番目として、別紙のごとき扶助生殖医療基本理念( 資料1)を無視できないこと、
第二番目として、別紙のごとき代理出産に関する産婦人科医の義務(資料2)を無視できないこと、
第三番目として、たとえ国内で禁止しても、代理出産を希望する人は海外の女性の助けを借りての、より高額な代理出産を続けることとなるであろうこと。国内で禁止し海外に責任を委ねる姿勢は、日本人として極めて恥ずべき行為と私は考えます。
第四番目として、たとえ禁止されようとも、必ずや水面下で代理出産は施行されるであろうと思われること。
第五番目として、代理出産を禁止することは、日本国民として保障されている幸福追求権を無視することとなり、憲法違反であること。
期を同じくして、ロキタンスキー症候群の女性に対して、将来の結婚、そして代理出産の際の採卵を可能とすべく、膣を作る手術をさせていただきました。そして、その方に夢を持っていただけるよう、子供を手にすることの出来た、かつては同じ境遇であった山田さん夫妻とお会いする機会も提供させていただきました。
ロキタンスキー症候群の女性は、日本において少なくみても毎年数10人は生まれています。また、現在結婚を希望していても子宮がないことにより結婚が叶わず、子供を欲しくても手にすることのできない同じ立場の女性は、いま何千何百という数で存在しているのです。そして、向井亜紀さんのように、子宮を失ってしまった女性も何千何百という数で存在しているのです。
その人達をみんなで手を差し延べ助けてあげるのが、私達の社会ではないでしょうか。
日本学術会議の皆さんは、日本を支える一流の知識人であるはずです。その知識人の方々が、寄ってたかって言わば生殖障害者とも言える人達を、結果的に差別し排除しようとしている現状を、私達は絶対に看過してはならないと思っています。
今回生まれたお子さんは、祖母(山田さんの実母)の子供として出生届け、そしてすみやかに、山田さん夫妻に養子縁組するように手続き中ですが、50歳以上の女性の出産に関しては法務局が詮索することとなっています。そのため、医師による出生証明書があるにもかかわらず、現在まだ出生届が受理されず、そのため養子縁組の手続きが終了できておりません。
男性は何歳になって子供を作ろうと法務局に詮索されることはないのに「女性は50歳過ぎたら子供を生んではならないのか」と言いたくなるような日本の現状。また、本当の子供を養子縁組として取り扱わなければならない現状。そして何よりも誰にも迷惑を掛けていないこのような代理出産を、関与する医師まで罰則を設けて対処しようとしている現状を、私は全く理解できません。
いずれにせよ、8組の代理出産に関与させていただき、多くの御家族の温かい心に接することができました。特に今回の御家族の人間愛と、御主人の男意気には感動させられ、このような皆さんの下で育てられるお子さんは自己中心的な生き方でなく、他者を思いやれる人間性をもった人物として成長されることと思います。
もし、このような信頼関係に基づく代理出産をも禁止してしまった場合、子宮がなくても子どもを望む女性たちは、国内においていったいどのような方法で救われるというのでしょうか。
本日、お集まりの皆さん、今回のケースを通じ、山田さんと同じ立場の女性達のためにも、広く多くの人々に代理出産の必要性をお伝え願いたく存じます。

