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「学術会議による生殖障害者の差別・排除を認めて良いのでしょうか」

2008.01.31

諏訪マタニティークリニック  根津八紘

H20.1.31 PM6:15~

於 はあといん乃木坂 413号室



向井亜紀さんの最高裁判決、また、祖母が孫を出産する形の代理出産に関する発表が契機となり、日本産科婦人科学会が国に下駄を預ける形で学術会議において代理出産が検討されて来ました。その結果は皆さんの知るところであります。その主たる内容は、


1. 生まれて来る子の福祉が保障できない

2. 身体的危険性、精神的負担を伴う

3. 家族関係を複雑にする



以上であり、要は禁止とのことでした。これ等の理由は、日本産科婦人科学会の代理出産禁止の会告内容とほとんど同じものであり、私としては到底承服できるものではありません。


そもそも学術会議による検討方法がスタート時点から間違っていたと言えるでしょう。何故ならば、今回の検討に当たり、代理出産をした人、または代理出産を必要とする人達の声を、たった一回しか聞かず、後は代理出産を否定するために条件を整えていたとしか考えられないからです。



代理出産に手を貸している私ですら、以前はそこまでしなくてもと考えていました。しかし、代理出産でなければ子供を手にすることのできない方々から、その苦しみと悩み、そして代理出産への望みをお聞きすればする程、このような立場の人達は生殖医療における障害者、即ち生殖障害者(とあえて表現させていただきます)であると感ずるに至りました。本来ならばこの生殖障害者の実態を調べたうえで現実を把握し、その人達のために何をすべきかを考えるのが先決ではなかったかと思うのです。



更に、弱い立場の当事者達からの話を聞くことが難しければ、現実に代理出産に関与している私から、時間をかけて患者の苦しみ、悩み希望を聴き出し、日本において公表している5例のケースに関し聴き出すべきではなかったか。そうしていれば、もっと生殖障害者中心の答えが出たはずです。それが最初から哲学や倫理学を論じ、結局は学術会議のメンバーの考え方や価値観を生殖障害者に押し付けただけであると思うのは私の思い違いでしょうか。

ここで学術会議が代理出産禁止とされた根拠の1から3について再検討してみたいと思います。
















1. 生まれて来る子の福祉は、普通に生まれて来た子においては、100%保障されていると言えるのでしょうか。最近の世相を鑑みれば、望まれて生まれて来る代理出産の子の方が、これからの人生においてどれほど恵まれているかです。
2. 身体的危険性、精神的負担については、代理出産に関わる当事者達は承知の上でスタートしております。そもそもボランティアとはそのようなもので、ボランティア精神の本質を理解していない人たちは、必ず何らかの代償を求めた考え方を持ち易いのではないでしょうか。
3. 家族関係を複雑にするというのは杞憂でしょう。生まれて4、5歳頃になったら、生んでくださった方に感謝の念を抱かせるよう育てることの大切さを、私は指導しております。また、育んだ女性から無理矢理離すことは子供の人生に悪影響を与えるとするならば、子宮の無い女性に養子縁組を奨めることは矛盾してはいないでしょうか。



更に厚労省の行った代理出産に関する世論調査において、54%の国民が代理出産を容認するとした結果が出ました。それに対し、あれは代理出産の現実を充分知らずに出された結果であると決め付けている点は、余りにも国民の意見を無視してはいないでしょうか。



いずれにしても、生殖障害者を救ってあげようとする精神がどこにも見られないばかりか、代理出産をする当事者達をはなから犯罪者扱いしようとする考え方は、どこから来るものなのか、私には到底理解することが出来ません。



私は生殖障害者を救済すべく、5組の方への代理出産を実施、7人の子供の誕生について公表して参りました。そしてその後も2組の方が出産され、現在1組の方が妊娠継続されておられますが、高齢の方も含め、今のところ危険な状態になった代理母の方は出ていません。当然、代理母の健康チェックには細心の注意を払い、いずれも身内の方でボランティアとなってくださった方々ばかりです。これ等の方とは関係ありませんが、60歳未婚女性の件も、無事出産し順調に経過しております。



代理母になって頂く女性は少なくとも30歳代で40~50歳とならざるを得ないかも知れません。これとあわせて、一般の女性の高齢不妊の増加、高齢出産の増加の中で、当然高齢に伴う妊娠・出産のケアや管理は極めて重要となっています。今後は危険性を指摘するばかりでなく、新たにその分野の研究を深め、安全を確保しつつ、高齢者における妊娠・出産の充実をはかり、その長所についても考えて行くべきではないでしょうか。



いずれにしても、代理出産を禁止、それを担当した医師には行政罰も辞さずとのこと。それからすれば、結果的には代理出産に手を貸している私はいわば犯罪者であるということになりますが、54%の国民の支持を無視した学術会議の委員こそ、国民に背く犯罪者ではないでしょうか。



本日のシンポジウムは、今までの考え方の下に、国民を説得する内容としか思えませんでした。こうなった以上は、立法府の皆さんのお心にお願いするより仕方がありません。しかし、それでも代理出産禁止とするならば、選択の自由の侵害と、生殖障害者の差別と排除を理由に、その法律を違憲立法として国を訴えて行くつもりです。